リタ・ウエダ『白夜』& I Have My Mother’s Eyes
カナダ人作曲家リタ・ウエダが紡ぐ、杉原千畝の歴史的偉業と癒しの物語
国際的なバックグラウンドを持ち、国内外で活躍する音楽家たちが、杉原千畝と縁深い早稲田大学小野記念講堂に集結し、
1日限りの特別なパフォーマンスをお届けします。どうぞ、この貴重な機会をお見逃しなく。
Infomation
歴史に刻まれた偉業ー杉原千畝:日本とカナダをつなぐエピソード
1940年、当時、リトアニアにある日本領事館領事代理であった杉原千畝は、ナチスの迫害から逃れようとする数千人のユダヤ系ポーランド人に命を救うビザを発行しました。彼の静かな英雄的行動は、妻の杉原幸子によって歌集『白夜』に綴られています。この歌集で幸子は、美しいヨーロッパの田園風景や外交官の妻としての豊かな生活を描きつつ、1940年の夏に訪れた運命的な出来事、そして避難を求める家族たちとの出会いを回想しています。
その中には、ブルーマン一家も含まれていました。杉原のビザによって、ゾシアとナテック・ブルマンは日本へ逃れ、横浜からカナダへと渡る最終船に乗ることができました。バンクーバー到着後、ゾシアは家族全員が殺害されたことを知りましたが、力強く生き抜き、3人の子供たち(ジョージ、ボブ、バーバラ)を育てました。後にバーバラはホロコースト回想録I Have My Mother’s Eyes の執筆を始めましたが、完成させる前に癌で亡くなってしまいました。彼女の娘ダニエルがこの回想録を完成させ、杉原家とブルーマン家の3世代にわたる深いつながりが描かれました。
最も重要なのは、『白夜』とI Have My Mother’s Eyes のどちらも、戦争とトラウマに直面した人々の人間の思いやり、家族の愛、そして世代を超えた癒しの物語であるという点です。(リタ・ウエダ)
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今回の来日公演では、カナダ人作曲家リタ・ウエダが書き下ろした新作『白夜』が披露されます。この作品は、杉原千畝の妻、幸子の歌集『白夜』にインスピレーションを得ています。一方、バンクーバーで初演され高く評価された I Have My Mother’s Eyes は、ブルーマン一家の物語を描いており、今回が日本初演となります。
リタ・ウエダのこれらの作品は、杉原千畝の勇気とブルーマン一家の希望を讃え、日本とカナダを結ぶ新たな音楽のかけ橋となるでしょう。
歴史と音楽が交差する特別なひとときを、杉原千畝の偉業と、それによって救われた命の物語を音楽で体感できるこのコンサートで、ぜひお楽しみください。
日 時:2024年12月1日(日)14:00開演(13:30開場)
会 場:早稲田大学 小野記念講堂(東京都新宿区戸塚町1-103-18 27号館 地下2階)
高田馬場駅(JR、西武線)より徒歩20分、早稲田駅(メトロ)より徒歩5分
入場料:無料(要予約)全席自由 ※ご予約はこちらの予約フォームよりお申し込みください。
※未就学児入場不可
■『白夜』〜杉原幸子による歌集『白夜』より(2024)世界初演
リヴカ・ゴラニ(ヴィオラ)、櫻井亜木子(琵琶)、藤髙りえ子(琵琶)
■ I Have My Mother's Eyes: A Holocaust Memoir Across Generations(2023)日本初演
バーバラ・ルース・ブルーマン著回想録 I Have My Mother’s Eyesより
ロドニー・ロバートソン(脚本)
バーバラ・エベソン(メゾ・ソプラノ)、佐藤尚美(笙)、黒田鈴尊(尺八)、マクイーン時田深山(箏)
作曲:リタ・ウエダ
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主催:『白夜』制作実行委員会
助成:Canada Council for the Arts、British Columbia Arts Council
協力:特定非営利活動法人杉原千畝命のビザ、早稲田大学文化企画課、オフィスカドワキ、株式会社しろばら百藝社
後援:カナダ大使館
制作:門脇央知、鐘ケ江織代
Profile
リタ・ウエダ Rita UEDA (作曲)
カナダ・バンクーバー在住。作品は「詩的でありながら繊細で内省的だ」と称賛されている(Guido Barbieri, Warner Classics)。最新作の Birds Calling… From the Canada in You(2022)は、笙(日本の笙)、笙(中国の笙)、嗩吶(中国の木管楽器)とオーケストラのための作品で、「新鮮で、完全にカナダ的で、驚くほど独創的だ」と高く評価される(James Imam, Musical America Worldwide)。
10年以上にわたり、カナダの音楽シーンであまり表に出てこないコミュニティをフィーチャーした異文化作品を積極的に創作し、最近のコラボレーションには、バンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラとともに制作されたas the first spring blossoms awaken through the snow(2021)の異文化アンサンブルや、Fly Away Phoenix, Into the Sky (2021)の三弦(中国の伝統楽器)と異文化弦楽器のための作品がある。
また、Il Viaggio di Dante(2021)は、古筝(中国の箏)と室内オーケストラのための協奏曲で、ダンテ・アリギエーリの没後700周年を記念するフィレンツェ市全体の祝典の一環として、イタリア・フィレンツェのニッコリーニ劇場でEnsemble Biosによって初演された。
www.ritaueda.com
Photo: Alistair Eagle
リヴカ・ゴラニ Rivka Golani(ヴィオラ)
イスラエル生まれ。テルアビブ音楽院で、偉大なヴィオラ奏者で作曲家のオデオン・パルトスに師事。1970年代半ばにカナダに移住し、ソリストとしてのキャリアを本格的に開始。現在はロンドンに在住し、トリニティ・ラバン音楽舞踊大学で教鞭を執り、世界中から集まる学生たちに指導を行っている。ヴィオラの技術向上に多大な貢献を果たし、これまでに自身のために作曲された作品は350以上、そのうち80以上が協奏曲であるなど、現代を代表するヴィオラ奏者の一人として高く評価されている。
また、世界の著名なオーケストラとソリストとして共演しており、ロンドンのプロムスに3度出演。1986年には、東京のサントリーホール開館記念コンサートにおいて、東京交響楽団と共に湯浅譲二作曲「ヴィオラとオーケストラのための『啓かれた時』」の世界初演を務めた。
カナダ・アルバータ州のフォート・マクラウド音楽祭の芸術監督としても活躍し、カナダ先住民族ブラックフット族との特別な協力関係を築いた。2016年には、ブラックフット族の一員として受け入れられ、"A woman who sings from a high place" を意味する「Itspanhskiakii(イツパンヒスキアイ)」という名前を授かっている。
さらに、ヴィジュアル・アーティストとしても活躍しており、彼女の作品はイスラエル、オーストリア、ドイツ、イギリス、アメリカ、カナダで展示されている。
櫻井亜木子 Akiko Sakurai(琵琶)
音楽家、琵琶奏者。櫻井亜木子は東京音楽大学時代に薩摩琵琶を田中之雄氏に師事した。日本の伝統音楽を代表するひとりとしてハンガリー、カナダ、アメリカ合衆国、ハワイ、中国、韓国、インドネシア、香港、エルサルバドル、イギリス、イタリア、スイス、アルバニア、フランス、スペイン、チュニジアなど様々な国で琵琶演奏を行った。
アメリカでは2011年と2012年にはニューヨークのAPAP(Association of Peforming Arts Presents)音楽祭に参加し、メトロポリタンミュージアムで「耳なし芳一」を披露した。また、ジュリアード音楽院でワークショップ、ボストンのマサチューセッツ工科大学でも公演を行った。
また、歌手で作曲家の小椋佳とのツアー公演で日本国内40都市を巡回。氷川きよし、藤あや子、石川さゆり、中村橋之助、浅香光代、GACKTなどアーティストとのコラボでも積極的に活動しており、テレビ局やラジオ局の番組、日本中の学校で教育プログラムの一環として演奏している。そのキャリアを通して、日本琵琶楽コンクール優勝、文部科学大臣奨励賞、NHK会長賞を受賞。
2015年、日本の伝統文化交流使として初めてブラジルを訪問し、ブラジルのさまざまな都市で公演を行った。
2018年のブラジル日本移民110周年記念の際には武満徹の重要な作品で尺八、琵琶とオーケストラに向けたオリジナル曲、「ノベンバーステップス」をサンパウロ市立劇場で演奏した。南米において琵琶と尺八を使用した現代曲の初公演であった。現在、日光観光大使・鹿児島琵琶教室講師。
藤髙りえ子 Rieko Fujitaka(琵琶)
神奈川県逗子市出身。筑前琵琶を田原順子に師事。古典弾き語りや現代邦楽の演奏活動を行いながら、オリジナル作品の創作にも力を注ぐ琵琶奏者。ソロライブ、学校公演、他楽器とのアンサンブルなど幅広く活動。芝居の伴奏、書道・生け花・舞踊など他ジャンルとのコラボレーションや即興パフォーマンスも行う。和楽器オーケストラ「日本音楽集団」の団員として多数の公演に参加。第5回東京邦楽コンクールにて日本現代音楽協会賞受賞。第15回くまもと全国邦楽コンクールにて優秀賞受賞。NHK邦楽オーディション合格。国立劇場主催の現代邦楽公演やNHK-FMの邦楽番組に出演。都内で琵琶教室を開き、指導やワークショップも行っている。
ロドニー・ロバートソン Rodney Robertson(脚本)
詩人、脚本家、国語教師。カナダ・ノバスコシア州ケープブレトンで育ち、教育を受け、数年間日本に住んだ後、バンクーバーを拠点とする。現在はカタールのドーハで英語を教えている。彼の人生と作品は、旅で得た経験、一文化圏の田舎での生い立ちと、現在のバンクーバーやドーハでの多文化的な都市生活の間で感じる緊張感に影響を受け続けている。マーガレット・アトウッド、アル・パーディ、テッド・ヒューズ、シェイマス・ヒーニーといった作家から影響を受け、これまでに400以上の詩といくつかのオペラ台本を執筆している。
バーバラ・エベソン Barbara Ebbeson(メゾ・ソプラノ)
ビクトリア大学音楽学部で声楽の修士号を取得し、Banff Centre for the Artsでオペラを学ぶ。
これまでに、パシフィック・オペラ・ビクトリア、ビクトリア交響楽団、バンクーバー交響楽団と共演するなど、現代カナダの声楽作品を世界各地で披露している。また、バンクーバーのカナダ音楽センターでアーティスト・イン・レジデンスを務めるなど、彼女の継続的なプロジェクトには、様々なレパートリーの歌曲リサイタル(自身のビジュアルアートや映像を投影しながらのパフォーマンス)や、新作の録音・演奏が含まれる。さらに、オペラに対する新たな情熱を持って意欲的に取り組んでいる。
Photo: Flick Harrison
佐藤尚美 Naomi Sato(笙)
東京芸術大学音楽学部器楽科(サクソフォーン専攻)卒業、アムステルダム音楽院大学院修了。 東京芸術大学在学中に副科として笙を石川高氏に師事。 アムステルダム音楽院在学中にソクラテス奨学金にて、パリ高等音楽院に短期留学。 ソリストとして第2回国際アドルフサックスコンクール、セミファイナリスト、 第3回グスタフ・ブンカ国際サックスコンクール第3位。 室内楽の分野では第一回アルメーレ室内楽コンクール優勝、第4回グスタフブンカ国際サックス 室内楽コンクール第3位(アムステルサクソフォーンクァルテット、2002年まで所属)。現在は、サックスのみならず、東京芸術大学在学中に学んだ笙、アムステルダム音楽院にて学んだ 作曲、即興を使った音楽活動をヨーロッパを中心に展開中。
2003年より Nieuw Ensemble / Atlas Ensemble(アムステルダム・オランダ)のレギュ ラーゲストメンバーとして、笙と西洋楽器の組み合わせた作品制作のためのワークショップ、制 作公演に深く携わってきた。
笙奏者として今までに、欧米や北米など国内外で活躍し、 2005年には、ハーバード大学、マサチューセッツ大学、ノースイースタン大学にレクチャーリ サイタルに招聘。日本の伝統楽器や文化を通してみた、現代音楽に関するレクチャーを行った。 2006年にメルボルン大学にて、2009年にカリフォルニア大学デイヴィス校にて、201 1年にシカゴ大学にて、2013年にニューメキシコ大学、ブリガム・ヤング大学、2014 年に、 ブリティッシュコロンビア大学、ヴィクトリア大学、2024 年にはライプツィヒ大学で同様のレクチャーと作曲家のためのワークショップを行った。 サクソフォーンを新井靖志、須川展也、富岡一男、アルノ・ボーンカンプ、クロード・ドゥラング ルの各氏に師事。笙を石川高氏に、作曲をヴィム・ヘンデリクス氏に師事。
Photo: Robin Wong
黒田鈴尊 Reison Kuroda(尺八)
令和元年度文化庁文化交流使。人間国宝・二代青木鈴慕、三代青木鈴慕に師事。国際尺八コンクール2018inロンドン優勝。利根英法記念邦楽コンクール最優秀賞。ブリュッセルでの国際現代音楽祭ARS MUSICAにて武満徹"November Steps"他、Claude Ledoux、Denis Levaillant、藤倉大、山本和智、Rafael Nassifなど多数の尺八協奏曲や桑原ゆう“葉落月の段“のソリストを務めるなど、多くのオーケストラとの共演や、毎年の世界各国での独演会、数多くの新作初演を通じ、尺八の無限の可能性を追求している。新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」、「Final Fantasy X」やディズニー制作ハリウッド・ドラマ「将軍 SHOGUN」他CD、ラジオなどへ録音提供多数。 アンサンブル室町(第13回佐治敬三賞受賞)、邦楽四重奏団(1stCD「野田暉行邦楽作品集」は"レコード芸術"2016年12月号にて特選盤、OCORA/Radio FranceよりCD「三曲の芸術」録音発売) The Shakuhachi 5、RigarohieSメンバー。
Photo: Tomoko Hidaki
マクイーン時田深山 Miyama McQueen-Tokita(箏)
即興、現代音楽、オリジナル曲を世界中の様々な場で演奏する、オーストラリア生まれの箏奏者。伝統に基づきながら、ジャンルの境目に関係なく、現代人が面白い、聴きたいと思える音楽に箏を入れていくという考えで独自の音楽を目指す。ソロの他に、様々な楽器とのライブ活動も多く、その自然体で豊かな表現は定評を得ている。世界中から来日する海外のアーティストとの共演に加え、ヨーロッパや北米など海外フェスティバルでの招聘演奏も数多い。ソリストとして出演している音楽祭には、Powell Street Festival(加)、東京JAZZフェスティバル、Moers Festival(独)、Melbourne International Arts Festival(豪)等があり、共演している団体にはVancouver Symphony Orchestra、Australian Art Orchestra、日本フィルハーモニー交響楽団、トロントのThin Edge New Music Collectiveなどがある。また、様々な国の新世代の作曲家とのコラボレーションを通して、これまでにない箏のための音楽を作り上げようと前進する。2019年にはACC(アジアン・カルチュラル・カウンシル)の2018年度グランティとして半年間ニューヨークに滞在し、現代音楽、実験音楽、即興音楽シーンに関わり、活動する。2020年にヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、日本の作曲家の作品を収録したソロアルバム"SONOBE"をリリース。NYから帰国後には様々な方向に活動を繰り広げ、これまでに即興や自作曲、エレクトロニクスと声を取り入れるソロ演奏、実験的な現代音楽を新しい形で発表するLow Light Art Ensemble、そして映像・踊り・箏を組み合わせるSANKAKUを結成。小田村さつき、沢井一恵に師事、東京藝術大学音楽研究科修士課程修了。東京在住。
Photo: Masanori Yoshie
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